無題

I can....?

足が速く早くと動く。
翔は、大丈夫、かなぁ、
息が上がる、こんなに必死に走ったのはあれ以来だ。
翔と、約束、したあれ以来。
職員室を通ると、幸祐くんとばったり逢った。
3秒くらい目があって、バツが悪そうに目を逸らすと、ふらふらとわたしがきた方向に歩いていった。

カラリ、とドアが開く。
机にうつ伏せになっていた。
「翔、・・・?」わたしが小さく問いかけると
ゆっくりとこちらを向いて、「碧か、」と薄く笑った。
やさしそうな顔をしてて、わたしが大好きなかおだった。
別に外見で好きだってわけじゃない。
わたしと翔は小さいころご近所さんっていう付き合いで、
幼稚園も一緒だった、小学校だって一緒だった、わたしが転校する6年生までは、
『みどりちゃん!』『碧!』
幼い声が大人に近付くいて、どんどんわたしは翔に飲まれていくようで
もう気付いたときには翔が好きで、好きでたまらなかった。
だけど、だけれど、わたしが、転校する1年前、
わたしが転校するきっかけを作ってしまった。

もともと、小さなころから心臓が弱かった
わたしは早くは走れなくて、
スポーツもろくに出来なくて、
いつも親からはおとなしくしていろと言われていた。
『わたしだってみんなのように早く走りたい!遊びたい!』そう毎日思っていた。
そんなある日のこと、わたしはいつものように、体育を見学していた。
小学4年生がすることといったらドッチボールくらいしかなくて、
楽しみながら額に汗を浮かばせていた翔を見ていると
たまらなく一緒にスポーツがしたくって、ドッチボールがしたくって
思わず泣いてしまった。小学6年生にもなってそれがまた恥ずかしくって
体育館の隅っこでうずくまっていた。

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