無題
そうやって、わたしの額にキスしてくれた。
涙が自然とでた。
翔はゆっくりとわたしの傍を離れて、それから走って病室を出て行ってしまった。

それからわたしは小学校の卒業式を出ることなく、アメリカへ行った。
大きい封筒には卒業証書とクラスの写真が入っていた。
1年間という短い時間の中わたしは早く日本に戻れるようにと
どんなに辛い治療でも耐えて、耐えて、お母さんを心配させたくなくて、
涙をずっとこらえて泣き虫を治した。
ドナーも見つかって、腎臓移植をした。
1年と半年、日本で帰ってきた。
わたしの生命力はよかったらくして、すぐ回復へ向かって、
もう日本の病院でも対処できるところまで来た。
思いっきり走る事も少しだけれど、できるようになった。
翔、わたし翔がいてくれたから、今を歩いていけるんだよ。



「いててー幸祐つえーなー」
「何いってんの?元々翔のせいでしょう?」
「、そうだなぁーあとで謝ろう」
「まさか、翔が部活で悩むなんてね・・・、」
「悩んでねーよ!幸祐がサッカー馬鹿するから一回殴ったんだよそしたら殴り返されてー・・痛ぇー・・・」


赤くなった頬を冷やして、翔が痛い痛いとつぶやく。
翔がうそを言っていることなんてすぐわかった。
だって、幸祐くんには殴られた跡なんてどこにもなかったから。
ほかに別のことなんだろう・・・
わたしに本当のことくらい言ってもよかったのに。
でも、人に心配させたくないという翔も好きだったから何も言わなかった。


「ねぇ、翔、覚えてる?約束」
「ああ、覚えてるよ、碧おかえりってまだ言ってなかったなー。」
「それなの!?」
「嘘、嘘、碧よく頑張ったな、これから俺がお前を守るから。おかえり、碧」

にこりと笑う翔が愛しい。
そう思っていると翔が額にキスをしてくれた。
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