無題
だけどある日、俺が「小学校の頃何かあった?」と聞くと、「何で?」って言っていきなり泣き出した。
焦って俺はごめんとずっと言っていたら、遥はぽつり、ぽつりと小学校の頃の自分を話してくれた。
いじめにあったこと、何度も自殺を考えたこと、
だけれど、遥は「理由なんて無しで虐めをする人なんて誰もいないんだよ。誰にだって理由がある、私はそれが分からなくて、だから虐められていた。だから悪いのは私なんだ。」と最後に言うと、
俺を顔を窺うように「ごめんねひいたよね、もう私にしゃべりかけなくてもいいよ」と言って帰ろうとした。
俺はどんだけ辛い思いしてきたんだ、こんないい奴のどこが悪いんだ、と余計腹が立った。
それと一緒に、どうしてもコイツを守ってやりたいという想いがまたこみ上げてきて、
帰ろうとした遥の腕を握った。

「俺、お前のこと守りたい。」

自分でも、どうした?と思った。体が勝手に動いて、口が勝手に動いて、
だけれども、本当の気持ちだった、だから今の言葉に嘘は無いと感じた。
驚いた顔をした遥はもっと泣き出して「なんで、」という遥を強く抱きしめた。

「好きだから」

やっと言えた、碧には申し訳ないと思った。
だけど、ここまで本気に好きになった奴を守りたいと、手放したくないと思った。
なにより、遥の隣にいるだけで俺は本当に心地よかった。


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