無題
碧がどんな目をして俺を見ているのかが痛いほど分かった。
だからすぐに男子の集団に紛れ何事もなかったかのように笑った。

今だったら戻ることが出来るかもしれない、

頭の中で出た言葉を自分の声でかき消した。
もう、俺は碧を護るって決めたんだ。あれで最後だ。
遥に触れたり声をかけるのはこれで最後だ。

碧には、先に帰っててもいいと言った。
どうせ俺はまた職員室に呼ばれるだろうし、
保健室を出ると自然と溜息が出た。
ごちゃごちゃになった気持ちをまとめて吐き出したい気分だった。

不安の色が消えた碧の顔は綺麗に笑っていた。
昔から碧は容姿が良かった、だから余計冷ややかされたことだってある。
ごめんな、やっぱり好きなのは遥だ。だけど、碧は大切な人だ。
碧には嘘なんてつけない。だから碧はぜったい俺が守る。
知ってるさ、碧の余命は3年だって。
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