無題


「────ぅ!・・・遥!」
「ふわっ!」

晴菜の大きな声で目覚めた。
晴菜は少し困ったような顔をして「もう、お昼だよ」って私に言った。

「ああ、そっか、お昼だね」

ガヤガヤとクラスの全員が話す声が聞こえた。
このクラスはいつでもうるさい。
最近担任にブチギレられて、やっと少しだけ静かになった所だ。
男子の笑う声がした。
ふいに後ろを見る。
翔がいた。彼は今朝の事など微塵にも思わず笑っている。
・・・心変わりしたのかな?
心の中でぽつりと言葉が出てきた。
嫉妬なんかしていない。翔と私が別れた理由は、
翔に好きな人が出来たと言う理由なんかじゃない。
時が来て、別れるという運命がちゃんと私と翔が付き合う前から準備されていたんだ。

翔が私より愛する人が出来たとか、もうなんの関係もない私にとっては
どうでもいい話になっていた。
興味を無くしたならそこで終了。
可哀相な自分の心、醜い自分。
それだ、私は。

「・・・ねぇ、遥・・・」
「何?」
「やっぱりさ、翔くんと別れなきゃいけないわけ?」
「えーだってさ、翔が私に興味なくなったらそこで終わりだよ。付き合ってる意味なんて無いじゃん」
「うーん・・・・でも遥上の空。」
「そっかなぁ・・・私そんな引きずるタイプじゃないハズだが!」
「アハハ!そうだよね!あたし勘違いしてた!」

私の言葉に晴菜は納得して、笑った。
そんなに、上の空だったの?
そんなに、翔のこと気にしてた?
・・・・分かんない・・・。
自分のことなのに分かんないや。
だけれど、確かな事がちゃんと心の中にあるのを感じた。
もう、翔と私は『恋人』じゃないってこと。
ただのクラスメイトに戻ったって事。

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