天才的ドクターの純愛〜封印したはずの愛する気持ちを目覚めさせたのは二十歳の彼女だった
「真由香の手術は無事終了したよ、しばらく様子を見ないといけないが、とりあえず安心だな」

「ありがとう、最上、世話かけたな」

真由香は少しずつ回復に向かっていた。

そんなある日、思いもよらぬ出来事が起きた。

真由香は車椅子でトイレにいけるまで回復していた。

私はトイレに行った帰り、ナースステーションを通りかかった時、看護師さんの話し声を耳にした。

ナースステーション横のドアがほんの少し開いており、そこから聞こえてきたのは「やっぱり癌だったんですってね、まだ二十歳なのに、もう手遅れで、何も出来ないままインオペしたって、最上先生の腕をもっても不可能なことはあるのね」と……

信じられなかった。身体の力が抜けて、私はすぐに病室に向かった。

嘘、私、癌?

最上先生の嘘つき、助けられない命はないって言ってたのに、嘘つき。

私は布団をかぶって泣いた。

その日の夕方、手術後の診察に最上先生が私の病室を訪れた。

「真由香、どうだ」

私は布団をかぶって答えなかった。

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