これはきっと、恋じゃない。
13.春を待つひと①
「……結局、だれもあたしのこと考えてないんだろうなって」
「うん」
「あたしのことを思って離婚しないんなら、そんなの間違ってる」
「そうだよね、梨花ちゃんは今の状況が辛いんだもんね」
「そう! ……なんか、逢沢先生に話したら、ちょっとすっきりしてきたかも」
「ほんと?」
高校を卒業して、6年が経った。
わたしはいま、高校の養護教諭として働いている。
「はーあ、みんな逢沢先生みたいになればいいのに」
「ええ?」
「優しくて、なんでも話聞いてくれて」
「そうかなぁ」
養護教諭として働きはじめて、やっと1年が経った。長いような短いような、あっという間な日々。大学に入って目指すと決めた日、色んな人から大変だよと言われた。
たしかに楽な仕事じゃない。でもわたしは養護教諭の仕事が好きだし、自分にも向いていると思う。そう思えているのは、高校生のとき、王子くんに言われた言葉があるから。
『面倒見が良いよね』
『サポートする仕事が向いてると思う』
サポートできる仕事。それに就けるように、大学は心理学部を選んだ。そこでいろんなことを学んでいくなかで、わたしは、悩みを聞いてそっと背中を押せるような人になりたいと思った。
はじめて、夢を見つけたのだ。