これはきっと、恋じゃない。

14.遥けき灯の向こうへ⑤


 まずは、デビューおめでとうございます。
――ありがとうございます。長かったなぁ。


 長かったですか。
――想像していたよりも。ずっと悩んでばかりだったし、不安だったし。メンバーにはたくさん迷惑をかけてきた。だから本当によかった。


 それでは、今までの王子くんを振り返っていきたいんですけど、なんでアイドルを目指そうと思ったんですか?

――きっかけは、楢崎永久くんが出演していたミュージカルを兄の旭羽と一緒に観に行ったことです。きらきらでかっこよくて、あんなに人を惹きつける役者がいるのかってすぐに魅了されて。

そのあと調べてみたらアイドルで、納得しました。永久くんの姿を追っていくたび、いつしかああいう風な役者になりたいと思いました。兄は逆に、アイドルになりたいと思ったみたいで。


 じゃあ、王子くんの夢は役者だったんですか?

――はい。最初はそうでした。アイドル活動をしていけば、永久くんのようにきらきらで人を惹きつける役者になれるって思って、親に相談して今の事務所に移籍したんです。劇団時代からいくつかドラマにも出てましたが、端役ばかりで。

でもオーディションとか受かって、メインの役ももらえるようになってからは、僕はこのまま役者として生きていくんだとずっと思っていました。


 いまも精力的に演技の場で活躍していますよね。
――そうですね、やっぱり演じるのは楽しいです。


 時を同じくして、兄の旭羽くんが現セレンディピティの遠山一佳くんと辰巳琥太朗くんと『KIA』というユニットを組むことに。

――ちょうど僕が13歳、旭羽が16歳のときですね。そのとき僕はドラマとか舞台中心で役者の道に、旭羽が正統派アイドルの道を各々進んでいました。僕が旭羽のコンサートに行ったり、旭羽が僕の舞台を見てくれたり。KIAのコンサートを見にいくたびに、この人たちはすぐにデビューして売れていくと思っていましたし、自分も含めてこのままぜんぶうまくいくのだと信じていた。

< 121 / 127 >

この作品をシェア

pagetop