これはきっと、恋じゃない。


 そう思ってると、後ろのドアが勢いよく開いた。なんだと思って見てみると、ずんずんと男の子2人組が入ってくる。真っ黒の髪の毛をセンター分けにした背の高い男の子と、ふわふわした少し明るい茶髪の男の子だ。

 クラスに残ってる人たちも静かになり、その人たちの挙動をじっと見つめていた。でも当の本人たちは全く気にしていないようで、王子くんの席まで来ると、そこにいる女の子たちに対してにこりと笑った。

「あ、いた」
「ハルちゃん」

「セレピの英城生、そろったね」と呟いたのは亜子ちゃんだ。

「あの人たちもセレピ?」
「そう。背の高い方が館町智成(たてまち ともなり)で、小さい方が菅凪晶(かんなぎ あきら)」
「へぇ、はじめて見た」
「いや、生徒会副会長たる千世が、あの有名人2人を見たことないことが珍しいからね」

 遠巻きに見ていると、館町先輩が女の子たちに間に割って入っていった。周りの女の子たちも、館町先輩たちを見て小さく歓声を上げた。

「遥灯、行くぞ」
「ごめんねみんな、俺たち用事あるから」

「えー残念! 遥灯くんがんばってね!」
「館町先輩も、がんばってください!」
「うん、どうも」

 館町先輩が見せた笑顔に、「キャアアア!」という歓声が上がる。あまりの甲高さとうるささに、わたしは思わず顔をしかめる。
 ……もしかしてこのクラスは、常にこうなってしまうのだろうか。さようなら、平穏な高校2年生。

「まあ、そのうちみんな慣れるよ」

 わたしが考えていたことを見透かすように、亜子ちゃんは最後のおかずを食べながら言った。

「3年生の先輩たちなんか、もうただの高校生としか見れないって言ってるし」
「へぇ……」

 だったら早くそうなってほしい。
 ……なんか落ち着かない。
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