これはきっと、恋じゃない。

1.陽春の邂逅


 パッと目が覚めた。

 いつのまにか、寝落ちしてしまっていたらしい。
 それにしてはずいぶんと寝覚めが良かった。頭の中はすっきりと冴えていて、寝起きの気だるさもない。

「ん……」

 のっそりと起き上がり、時間を確認するためにスマホを探す。手を何度かベッドの上にさまよわせると、ひんやりとしたものが指先にあたった。

 電源を入れ、液晶の眩しさに目を細めながら見ると、そこに表示されたのは8時30分の文字。

「は――」

 8時30分!?
 学校! ――遅刻だ!

 1時間目の授業が始まるのは、9時からだ。……どう頑張ったって、あと30分では到底間に合わない。

「……終わった」

 サイアクすぎる。
 これが普通の日ならまだよかった。でも、今日は違う。

 新学期。――しかも2年生の初日だ。

 ――終わった。
初日から遅刻なんて、大やらかしも大やらかしだ。

 ……はぁ、そもそも今日ってクラス発表あるよね、遅刻したらどうなるんだろう。
 いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない。
 ああでも、それも大事か。

 わたしどこのクラス? クラスわかんなかったら教室もわかんないじゃん!

 職員室行くのかな。それさすがに恥ずかしすぎない?
 寝坊して遅刻したのでクラス教えてください――!?
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