これはきっと、恋じゃない。
「おいそこ、手伝えよ」
「あ、森山! 森山は館町くんとずっと同じクラスだよね?」
そこに現れたのは、シャツ一枚で腕まくりをして軍手まではめた森山先輩だった。やる気満々の森山先輩は生徒会長だ。
「タテ? まあ、そうだけど」
あだ名で呼んでるんだ。ってことは、相当仲が良いんだろうな。
「入学したてのとき、すごくなかった?」
「いや、別に」
「うそだ、菅凪くんすごかったもん」
「いや真悠先輩、森山先輩は覚えてないんですよ。興味なさそうじゃないですか」
「おい」
そう言うと、森山先輩から軽く睨まれた。全然怖くない。
「2人ともタテのことちゃんと知らないだろ。あいつ、目で蹴散らしてたから」
「蹴散らす……?」
そういえば、真悠先輩もさっき出待ちを蹴散らしたって言ってたような。
館町先輩って、そんな物騒な人なの?
「でも、睨みすぎて事務所に怒られたんだってよ。ちょっとは学校の子たちにも愛想振り撒けって」
「ええ」
「それからは割と親切になったかも」
そんなことあるんだ。大変だなぁ。
「ほら、無駄話は後だ。働け!」
「はーい」
わたしと真悠先輩と声を揃えて返事した。
そこからはちゃんと入学式の準備とリハーサルを手伝った。と言っても、ほとんど席に座っていただけなんだけど。