これはきっと、恋じゃない。


 重い足取りで生徒会室へと向かっていると、どこかいつもと違うような気がした。こんなにざわざわしたような場所だったっけ?

 ……まさか、王子くんたちがここで練習しているのがバレたんじゃ。

 安寧が崩れるような予感を感じながら少し足を早めると、ざわざわの正体が生徒会室からしているのに気がついた。

 な、なにごと?
 開けっぱなしになっていたドアからおそるおそる中を覗くと、森山先輩と目があった。

「お、逢沢! おつかれ」
「あ、おつかれさまです。……これ、なにごとですか」
「ああ、立候補だよ」

 立候補?

「あ、新しい生徒会の!」
「そうそう」

 ああ、もうそんな季節か。
 懐かしいな、去年は手当たり次第声かけてた感じなのに、今年は結構人がいる。みんなやる気があるんだ、すばらしいなぁと思いながら中に入る。

 一番前のホワイトボードには生徒会の役職が書いてあるけれど、横には赤いペンでほとんどバツがついていた。残っているのは庶務と会計。ここら辺は毎年人気がないと先輩が言っていた。

 当たり前だけれど知らない顔ばかりだった。
 もうすぐしたら森山先輩たちが抜けて、この子たちとやっていくことになるかもしれないのか。そう思うと少し寂しい気持ちが胸に広がった。

 わたしはいつもの席に座る。長テーブルの左端がわたしの居場所。隣は真悠先輩が座ってくれるけれど、まだ来ていない。

 そこに座ってリュックを抱え、立候補のための用紙を書いている子たちを眺める。上靴の色的に1年生と2年生は半々のようだ。みんな少し緊張したような顔をしている。

< 27 / 127 >

この作品をシェア

pagetop