これはきっと、恋じゃない。
「なんか死にそうな顔だな」
いつの間にかわたしの隣に立った森山先輩が、そう呟く。
「死にそうに見えますか」
「今にもね。なんかあった?」
「……ありました。それはもう」
森山先輩は少し笑いながら、まだ来ていない真悠先輩の場所に座りながら、「聞くよ?」と言った。なんかムカついた。
「……ペアワークの相手が学校になかなか来なくて、それでほとんど進んでなくて悩んでます」
言葉にすればするほど焦ってしまう。本当に発表の日に間に合うのかどうか、不安でしかたがない。
「もしかして山田先生の世界史?」
「それですそれです」
「あー、それはめんどくさいね」
「はい……」
ただでさえめんどくさい課題なのだ。
わたしはもう今日何度目かわからないため息をついた。
「俺はそれ図書館の本写した」
「そんな感じでいいんですか?」
「いいよいいよ。ただ、ネット写すのはやめた方がいいかな。本の方がちゃんとやった感じするし、みんなはネットだけど自分らだけ本だと先生からも褒められる」
「なるほど、ずる賢いですね」
「褒めてる?」
「褒めてますよ」
とは言え、結局ちゃんと話してどこの国にするのか決めないとなにもできやしない。
やっぱりわたしたちは遅れているわけで、実際、亜子ちゃんたちはもう取り掛かっているわけだし。