これはきっと、恋じゃない。

 翌日、朝から気分は最悪だった。学校に行かないといけないけれど、行きたくない。もし行って今日も会えなかったら? そう思うと、より一層足は進まなかった。

 それでも行くしかない。どことなく重たい身体を引きずって登校する。

 今日こそ声をかけて、ペアワークのことをちゃんと話さないといけない。今日を逃したら、間に合わないだろう。そうなったら、先生はどう思うだろう――。

 なんか気持ち悪くなってきた。
 込み上がってくる吐き気を感じつつ、わたしは教室に入る。いつもと同じ時間に来たはずだけれど、相変わらず3つ後ろの席は空白で。

 まさかまた休みなんじゃ……!
 さあっと血の気が引いていく。うそでしょ、それだけはやめて、ほんとに!

「千世ー、王子くん廊下にいるよ」
「え!」
「でもめっちゃ囲まれてて身動きとれないっぽい」

 さっきいた!?
 そう思いながら廊下に出てみると、久しぶりに学校に来たからなのか、王子くんはすでにたくさんの女の子たちに囲まれてしまっていた。

 ……さすがにあそこに割って入っていく勇気はない。話しかけたとたん、抜け駆けするなとみんなに睨まれてしまいそうだ。

 でもそうか、学校には来てるのか。
 だったら、話すチャンスは訪れるはず。
 ……よかった。

「いやよくない!」

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