これはきっと、恋じゃない。
「ちょっとー、声でかいよみんな」
そのとき、亜子ちゃんが呑気に言いながら教室に入って来た。
「亜子ちゃん」
「ごめんね、待たせて」
「ううん、ペアワークやってたから」
「ほんと? あ、どう、進んだ?」
「ぼちぼちかなぁ」
亜子ちゃんは自分の席に行くと、机の中から教科書やらをリュックに詰める。
「亜子こそ、王子くん来たときどう思ったの!?」
彩芽ちゃんの矛先が亜子ちゃんに向く。
んー? と、亜子ちゃんは教科書を詰めながら斜め上を向く。
「別に、私はセレピには興味なかったから、まじかーって思ったくらいかな」
「そっか、カルキスだもんね」
「そうそう。町田が来たら話は別だけどねー」
「町田高校生じゃないじゃん!」
よくわからないけど、町田というのは亜子ちゃんの推しだ。派手髪好きだということしか知らない。
「んじゃ、帰ろっか千世」
「うん」
「ばいばーい、千世ちゃん亜子ちゃん! 発表楽しみにしてるねー」
「ありがとー! 彩芽ちゃんもばいばい!」
「バイバーイ」