これはきっと、恋じゃない。


 そうして、世はゴールデンウィークに突入した。

 課題も適当に終えて、リビングでだらだらとソファに寝転がってテレビを見ていたら、やたらと見覚えのある人たちが出てきた。

「――げっ」

『こんにちは! セレンディピティのリーダーで最年長の辰己琥太朗でーす』
『みなさんこんにちは! セレピの中間管理職、遠山一佳です。よろしくお願いしまーす』
『趣味はお菓子作り、最近作ったのはシュヴァルツヴェルダー・キシュトルテです! 現役高校生の菅凪晶でーす』

『いやいや、なにその名前!』
『強すぎ!』
『はいはいうるさいです。智成くんに自己紹介させたげてよ』
『タートルネックの貴公子こと館町智成です。よろしくお願いします』

 ――セレンディピティだった。

 4人はわいわいがやがやと好き勝手に話し始める。リーダーの辰己琥太朗は、それを特別止めるつもりもないらしい。
 ……にしても、王子くんがいない。

『えーとですね、最年少でかわいい王子様のセンター遥灯くんですが、ちょっと学校の用事で遅れて来ます』
『ペアワークの発表みたいです。非常に高校生でかわいいですね』
『俺らもかわいいでしょ?』
『…………』
『おい!』

 なんか、うるさい人たちだな。
 館町先輩なんて、学校で見るのとイメージが全然ちがう。ていうか、タートルネックの貴公子ってなに? いまタートルネック着てないし、普通のロゴスウェットだし。

 ――そんなことより、いま、ペアワークの発表って言った?

『ペアの子に迷惑かけたくないらしいです』
『そうそう。レッスンとかでもまじめに資料作りやってましたので』
『なんで遥灯の好感度アゲアゲキャンペーンしてんの』
『こたさんハルちゃんに甘いからさぁ!』

 ……え?
 
「いま、なんて――?」

 王子くんが発表のためだけに来たのは、わたしのためだったの?
 どういうこと!?

 もっと詳しく教えてよ!
 わたしはテレビに齧り付かんばかりに近寄る。でも4人はそれ以上そのことに触れることなく、移動し始めた。

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