これはきっと、恋じゃない。
ゴールデンウィークが明けて、5月も半ば。
少しずつ太陽の強さも増してきて、装いもセーターだけだったりベストだったり軽装に変わる頃。
「はぁ……」
わたしは学校に着くなり、机に突っ伏した。
どうやらセレピは、このゴールデンウィーク中に二度目の単独コンサートがあったらしく、感想ツイートや王子くんたちの名前がずっとトレンド入りしていた。
見ようと思わなくたって自然と目に入ってくるものを、いつのまにかタップしていた。そうしたら出てくる出てくる、アイドルとしての王子遥灯が。
「うっわ、どうしたのよ千世」
その声に顔を上げると、亜子ちゃんがいた。
「……おはよ」
「おはよう。じゃなくって、なんかあったの?」
なにかあった、か。
わたしはもう一度ため息をついて、周りを見渡す。王子くんもいなければ彩芽ちゃんもいない。話しても大丈夫そうだ。
「セレピをね、見たの」
「え?」
「……落ちたかも、しれない」
そう言うなり、亜子ちゃんは目をかっ開いた。そしてわたしの腕を掴む。
「詳しく!」
「えっ、ちょ!」
廊下に引っ張り出され、空いてたグループワークルームに連行された。
椅子に座るなり、「なんで!?」と、亜子ちゃんは身を乗り出す。
「王子くんたちが出てるテレビをたまたま見たの。そしたらその流れでライブシーンとかをお姉ちゃんに見せられて、……落ちた」
「おお……ちなみに推しは?」
「王子くんしか目に入らない」
「うーわ、どんまい」
なにがどんまいなのよぉ……。
亜子ちゃんは身を引いて椅子に座りなおすと、腕を組んでうんうんと頷いた。
「推しが同じクラスって、大変そうだね」
「お姉ちゃんと同じこと言わないで」
「でも黙ってなよ」
その言葉に、うつむく。