これはきっと、恋じゃない。


 そこで、区切りを告げるようにチャイムが鳴った。

「よーし、じゃあそろそろ終わるか」

 その声を合図にして、みんなが荷物を片付け始める。お疲れ様でした! とあいさつしなから帰っていくみんなを、わたしは座ったまま見つめた。

 そして新メンバーの子たちが帰っていって、生徒会室はやっといつものメンバーだけになる。

 森山先輩は、ホワイトボードの近くにあった椅子に座る。椅子の背に前腕を置いて、その上に顎を置いた。

「……なんかさ、やばくない?」

 静寂を破るように、香奈先輩が言った。
 なんのことか言わなくてもわかる。……水野さんのことだ。

「まぁでも、ありえない話でもないよな」
「……ですよね」

 たまたまわたしたちの近くにいないだけで、学校の中を探せばきっとそれなりにはいるのだろう。

「とにかく、あいつらの参加するしないは置いといても、今年は撮影禁止の周知を改めないとな」
「だね」

 森山先輩は赤いペンでホワイトボードに『撮影禁止』と書いていく。
 新学期の日にもらったプリントを思い出す。違反したら退学、だっけ。

「みんなテンション上がってやりかねないけど、最悪退学モノだし」
「そういえば、最近退学した人いないね」
「えっ! 昔いたんですか!?」

 真悠先輩の言葉に、わたしは思わず聞き返した。
 そんな話、初めて聞いた。あれってただの脅しじゃないんだ……!

「いたいた! セレピの辰己琥太朗が在学中ね。あの時代は英城が黄金世代で、俳優の中村凌太とか足立史也、女優は榎本真緒がいたから」

 芸能人に疎いわたしでさえも、知ってる名前が続々と出てくる。
 英城ってそんなにすごい学校だったんだ……。

「で、中村凌太と榎本真緒の写真が流出したんだけど、結局はたまたま一緒にいたとこただ撮られただけらしくて、撮った子が退学させられたんだって」

「なんでそんな詳しいのお前」
「おにーちゃんが同級生で」
「へぇ……厳しいんですね」
「まあ、事務所との信頼関係があるからね、有耶無耶にはできないんだよ」

 たしかに、そっか。

「ま、セレピが来ないなら大丈夫だと思うけどね」
「先生たちもそれはわかってるから、ちゃんとしてくれるだろ」

 ……なんか、ほんとに思ってたよりもすごい学校だったんだな。
 なんとなく家から近くて行けるところ、で選んだけど、水野さんみたいにセレピがいるからという理由で決めた子もいるだろうし。

「俺たちも帰ろうぜ」
「そうだね」
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