これはきっと、恋じゃない。

 ローファーから上靴に履き替えて、亜子ちゃんがメッセージで教えてくれた教室を目指す。2階の手前から3つめの教室が、わたしの新しいクラスらしい。

 いまの時間は、ちょうど1時間目と2時間目の間の休憩時間で、廊下はざわざわしている。クラス替えしたてだから、友達のところに会いに来ているからかもしれない。

 そのなかでも、4組のあたりの教室だけやたらと人が多かった。異様に女の子が多い。その様子も、前のクラスの友だちとの再会を喜ぶような感じではんなくて、みんな中の様子を伺うように、チラチラと教室の中を覗きこんでいた。

 なにかあったのかな。
 ……まさか、けんかとか?
 さすがに初日からけんかはやばいでしょ。

 そう思いながら教室に入ってすぐの場所で、亜子ちゃんを見つけた。

「亜子ちゃんおはよ」
「あ、やっと来たー」

 亜子ちゃんの苗字は宮本。だから席は廊下側の後ろの方だった。どうせわたしは逢沢だから、席は窓側の一番前だろう。チャイムが鳴るまで少し時間があるから、亜子ちゃんの近くの誰も座っていない席に座る。

「わたし、ほぼ人生初遅刻なの」
「うそお」
「ほんとほんと」

 座って教室をぐるりと見渡す。どんな子がいるのかな。1年生のころから同じクラスの子、ほかに誰がいるんだろ――。

「――え?」

 視線が、ひとつの席に留まる。

「なに、どした?」
「あ、あれ……なに」
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