これはきっと、恋じゃない。

6.初夏の気づき


 6時間目、ロングホームルーム。
 今日は雨の音楽祭で、クラスで何をやるか決める日だ。

 教壇には実行委員の田中くんと彩芽ちゃんが立って、クラスを仕切っている。

「とりあえず数出したいから、どんどん言ってって!」

 彩芽ちゃんて、こういう仕切ることに向いているな。明るいし、クラスに友達も多いから、自然と意見も出るというもので。

「やっぱりさ、楽なのは合唱じゃない?」
「えー! 2年なんだからミュージカルやろうよー」
「私も! ミュージカルがいい!」
「あたしダンス! セレピ完コピしようよ!」

 次々に上がっていく意見を、田中くんがどんどん書いていく。合唱、ミュージカル、ダンス。あとは、バンド。

「出揃った感じ? じゃあこの中から多数決で決めまーす」
「の前にさ、王子は参加するの?」

 突然挙がったその名前に、わたしは隣を見た。わたしだけじゃなく、クラス中の視線が集まったことに王子くんはなかなか気づかない。

 王子くんは頬杖をついたまま、どこか一点を見つめてぼーっとしている。

「王子?」
「……え?」

 そしてやっと気がついたのか、王子くんは首を傾げた。

「雨の音楽祭、来る?」
「あー……」

 ちらっと一瞬目があった。

「当日らへんのスケジュールがわからないから、役とかは無理かも」
「えー! 王子くんの王子様見たかった!」
「それはコンサートに来て欲しいかなぁ」
「チケット取れないじゃん!」

 チケット取れないって、そんなに人気なんだ。

 ……王子くんてば、思ってるよりもちゃんとクラスに馴染んでる。それはみんなが避けたりからかったりしないからだろう。

 このクラスって、良いクラスだな。つとそう思う。

「それじゃ、決めよう」
「だな。じゃあ、ミュージカルが良い人」

 正直なんでもいいし、みんなが挙げてるやつにしよう。
 そう思っていると、ミュージカルは大半が手を挙げた。おずおずとわたしも遅れて挙げる。

「これはもう決まったね」

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