これはきっと、恋じゃない。


 さすがにやばいと思った。
 テスト期間で生徒会の活動もないので、帰って速攻数学の問題集を開く。一度解いた問題をノートに解き直していると、ところどころ『テスト出る』と書いてあるところを見つけた。

 ……王子くん、テスト大丈夫なのかな。

 また考えてしまう。
 田中くんたちから写させてもらったり教えてもらったりしてるのかな。でも、そんな様子を見たことはない。

 たぶんまだお昼はダンスの練習をしているんだろう。

 テストに出るところ、教えてあげる?
 いやいや! それは迷惑でしょ。知ってたら、どうするの。ていうか気持ち悪いよ。

 ――でももし、知らなかったら?
 テストの点数が酷くて、お仕事セーブすることになったら?

 ああ、悩む!

 わたしはシャーペンを放り投げて、スマホを手に取る。
 そして王子くんのトークルームを開いた。

 ほんとに必要なこと以外は連絡してないから、随分と前の会話内容だ。

『突然ごめんね。そろそろテストだけど、範囲とかなにが出るとか知ってる?』

 そう打ち込んで、また悩む。
 ……やっぱりやめよう。これはお隣さんの域を超えている。

 そう、取り消すボタンをタップしたとき。

 ――ポコン。

「――え?」

 その音は、メッセージを送信したときの音。
 かわいい背景のトークルームには、わたしが送ったメッセージが。

「うっわあああ!!」

 間違えた!!
 最悪!

 送って、しまった。
 ……ど、どうしよう!?

 ――あ、送信取り消し! そうだ、そうすればいいんだ!

 取り消そうとしたとき、送ったメッセージには既読の文字。

「き、既読早いよ……!」

 ああ、お願いだからメッセージ送るなら早くして!

 スマホを机に置いて、じっと見つめる。椅子の上で三角座りする。ドッドッと心臓が大きく打っている。緊張して吐きそう、お腹痛くなってきた!

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