これはきっと、恋じゃない。

 そんなこんなで、なんとかテストの全日程を終えた。

「あー! 開放感すごーい!」
「ね! もう帰ってからなにしよう!」

 数学の出来だけは本当に最悪だった。絶対とんでもない結果だということはわかっているけれど、この際テストが返ってくるまで忘れることにしよう。もう終わったことだ。気にしない。

 ホームルームが終わって亜子ちゃんとだらだら喋りながら帰り支度をしているとき、隣の席が少し騒がしくなった。

「王子、テストできた?」
「思ったよりね。田中は?」
「数学だけはできたけど、英語がなぁ。……はーあ、仕事やってる王子が高得点とって、なーんもしてない俺が赤点とか母さんに怒られそ」
「ええ?」

 ……そっか、王子くんテストできたんだ。よかった。

「千世、なに笑ってんの」

 その言葉に目を見開く。

「は? 笑ってた?」
「ニヤニヤしてた」
「うそ!」

 慌ててわたしは顔を手で覆う。
 そんなにすぐに顔に出ちゃうかな!?

「じゃあ俺帰るね」
「おう。仕事、がんばってな」
「ありがと」

 王子くんの声を聞きながら、問題用紙をクリアファイルに入れて、机の上を綺麗にする。教室の後ろのロッカーから、いつも中に入れていた教科書を取り出して元に戻した。

「さて千世。ちょっとだけ音楽祭の準備やろ」
「あ、そうだね」

 脚本は無事完成した。
 テスト期間中だったけれど、ほとんど1人で亜子ちゃんが書いてくれたから、わたしは何もしていない。誤字脱字のチェックをしたくらいだ。

 これからは大道具や小道具の準備をすることになっている。舞台は基本的には音楽室だから、壁とかそういうのを作らないといけないのだ。

「使うものをリストにしないとね」

 教室は、いつのまにかわたしたち以外いなくなっていた。みんなテストが終わったから早く帰ったのか、部活に行ってしまったらしい。

 わたしはタブレットを取り出して、表計算のアプリを開く。大道具を作るのに必要な段ボールの数、小道具の種類。それらをまとめる表を作るために、キーボードで『準備物リスト』と打っていると、スマホが鳴った。

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