これはきっと、恋じゃない。
さぁっと血の気が引く。
……だめだ。前言撤回。なにも安心なんてできない。
やっぱり、わたしが王子くんのこと、好きってバレたのかな。……そんなわかりやすい態度はとってないつもりだけど。ていうか、王子くん来てないし。
色々と思考が頭をめぐる。おさまりかけた鼓動が、また早くなる。
「……変な意味じゃないからな、ただ単にお前が一番関わってるだろってこと」
「あ、ああ……」
わたしが一番関わってる?
いろんなことに安心してスルーしそうになったけど、その言葉が引っかかる。
……さすがにそれはないと思う、けど。
「王子くん、友達いますよね。ほら、田中くんとか松本くんとか」
「なんだけど、田中と松本よりもお前が一番注意深く見てそうだからだよ」
「……なにそれ」
「信頼してるんだよ」
その言葉は嫌いじゃない。けど、得意ではない。
信頼、か。
「佐藤先生は、王子くんのなにが聞きたいんですか」
「日頃の様子だな」
様子って。
そんなこと聞くなんて、なにかあったのかな。
「……王子くん、何かあったんですか」
「鋭いな。でもそれは言えない」
「はぁ……?」
でも、様子を聞くってことはそれなりのことか。
少しだけ、嫌な予感がした。
王子くんの身に、なにかあるのかと案じてしまう。
「でもわたし、ほんと何も知らないんですよ」
「じゃあさ、逢沢は王子のことどう思ってる?」
「ええ? えっと……、すごいなぁって思ってます」
「ほう」
佐藤先生は続きを促す。今まで王子くんについて考えていたことが、自然と口をついて出てくる。
「だって普通に考えてすごくないですか? 学校通いながらアイドルして、レッスンとかコンサートとか色々あるのに。そもそも大勢の知らない人の前で、自分達をさらけ出してやってる時点ですごいですよ。特に王子くん、お昼休みとかは友達とごはんとかじゃなくて、ずっとダンスの練習してるみたいだし」
うわ、わたしさすがに語りすぎ。
でもそう思っても止まらない。
「すごく努力家だし、見知らぬファンの子にも優しいし。ほんと、同い年だとは思えないです。尊敬、ていうか」
そういうところも含めて、わたしは王子くんのことが好きだと思うんだろうな。
「なるほどな。……ちゃんと見てくれる人、いるじゃんね」
「ええ……」
「まあね、逢沢も立派に副会長やって、色々がんばってるけど」
「お世辞はいいですよ」
どうせぜんぶお世辞。
ほんとうに思ってる? 疑心暗鬼になる。
「わかった、ありがとな。……あ、そうだ」
「なんですか?」
「逢沢、数学ちゃんと勉強しろよ」
「……ぎゃあ」
やっぱり言われてしまった。
だってさすがにびっくりした。……あんな点数、はじめてとったんだもん。
「数学のせいで道が狭まるかもしれないから、今からちゃんとやっとけよ。わかんなかったら教えるから」
「はぁい……」
色々やることがありすぎて、もうわけわかんなくなりそう。
「よし、もう戻ってもいいぞ」
「……はーい」