罠にはまって仮の側妃になったエルフです。王宮で何故かズタボロの孫(王子)を拾いました。
4ー7 ルーファスとその妻 ……?(終)
ルーファスが成人した日、彼は王宮へと住まいを移した。
そして毎日、私がルーファスの部屋に通うことになった。
何しろ、ラッセルの後宮に、ルーファスは足を踏み入れることができないのだ。今まで成人した子は皆王女だったので、こんなことになってしまったのはルーファスが初めてだ。
そして、ルーファスは私が作った食事以外のものを一切口にしない。お茶の一口ですら、口につけない。
仕方がないので、私が日に何度も出前をすることになってしまった。忙しいので、アリエルちゃんが、ラッセルと一緒に15時のお茶に来るようになっていたのは本当に助かった。今の私には、10時のお茶を用意する時間がないのだ。
「あのくそ爺さんも、そろそろ折れると思う」
自室で私を抱きしめながら、ルーファスはそんなことを言う。私を下賜してもらう話だ。
「ルー、あのね」
「うん、どうしたのサンディ」
そう言いながら、ルーファスは私の唇を塞いでくる。
話を聞く気、ないよね!?
「……なんで私のこと、愛称で呼ぶようになったの?」
うちに通ってくる王子王女の中で、ルーファスだけは私のことを、頑なに《サンドラ様》と呼んでいた。
「大人になるまでは、そんな資格ないと思ってたし」
「えー、そんなこと……」
「子供としてじゃなくて、サンディを口説く大人の男として呼びたかったんだ」
あざとい。うちの子は本当に、あざと可愛い。
誰だ、こんなふうにこの子を育てたのは。私じゃないから、きっとフリーダちゃんが犯人だ。そうに違いない。
こんなふうにルーファスはところ構わず私に抱きついてくるので、ある日、ラッセルと鉢合わせた。
ルーファスの執務室にお昼を届けにきた私を、ルーファスが例の如く抱きしめていたら、ルーファスに用事があったラッセルが、祖父の気安さで前振りの声がけもなく入ってきた形だ。
時が止まったかと思った。
というか、なんだこの空気は。
私からすると、ラッセルに義理立てするものは何もないし、ルーファスからラッセルに私達のことについては報告されている訳だし。ただまあ一応まだラッセルの側妃なので、ルーファスと執務室でいちゃついているのはよくなかった……かもしれない。
いやまあ、勝手にルーファスが絡みついてくるから、私の力じゃ逃げられないんだけどね!? 前振りの声がけがあれば、すぐに離れたしね!?
ラッセルは、何も言わずに、扉を閉じた。そのまま去っていった。
「……なんか、やばい?」
「僕が話しに行くから、大丈夫」
そう言って、ルーファスはラッセルのところへと向かった。
そして、お昼の時間には帰ってこなかった。
私は仕方がないので、森花ちゃんをその場に残して、後宮に戻った。
15時のお茶の時間、来たのはアリエルちゃんだけで、ラッセルは来なかった。
夕方に、お茶を差し入れに行った時も、ルーファスと会うことはできなかった。
私はまた、森花ちゃんとお茶を執務室に置いて、後宮に戻る。
夕飯を出しに行った時もそうだった。
私は痺れを切らした。