私だけのヒーロー
だけど、まだ私には話しておきたいことがある。
何度か角度を変えて口内を貪られたあと、私は息も絶え絶えになりながら本庄さんの胸の中から抜け出した。
「な、なに、説教って…」
話したいことは別にあったけど、濃厚な口づけを受けて回らない頭では、その前の会話を引っ張ってくるだけで精一杯だった。
本庄さんは少し不本意そうな顔をしながらも、一旦キスを止めて会話に応じてくれる。
「お前、あの女撒くのにどんだけ大変だったと思ってんだよ」
「あの女って、……椿さん?」
「まさかとは思うが、お前あいつのネットニュースの相手が俺だって思ってんじゃないよな」
じろりと睨まれて、ぎくっと身体が強ばる。チョイスした話題を間違えたようだ。
それが答えだと察した本庄さんに、ぎゅっと鼻をつままれた。