私だけのヒーロー

「いひゃいっ」
「バカ、そんなわけないだろ」
「れ、れも、ひょくじくりゃい…」
「好きでもない女と食事に行くほど俺は暇じゃない」

だったらあの匂わせ投稿の相手は誰なんだろうと思ったけど、本庄さんは全く興味がないらしい。

「でも、現場であんなにアピールされてたのに…」

解放された鼻をさすりながら言うと、くくっと意地悪く笑った。

「もうなくなったろ。空気読めないふりしてるけどプライド高そうだし。俺の相手はお前だって、あの映画関係者はみんな知っただろうからな」

そういえば昨日早瀬さんに「あいつと付き合ってんの?」と不機嫌に聞かれた。

ボソボソと「俺もカーアクションくらい…いや、でも…」と歯切れ悪く言っていたのを見るに、きっと本庄さんの凄さを目の当たりにして実感したんだろう。

今後は本庄さんのアクションを『あのくらい』だなんて言わないといいけど。

「監督も『本庄くん、やるねぇ』なんて笑ってたし。まぁ大丈夫だろ」

それを考えると頭が痛い。
必死だったとはいえ、カットがかかるまえに声を上げるなんてご法度だ。

< 65 / 73 >

この作品をシェア

pagetop