私だけのヒーロー
本庄さんを検査入院させる手続きをとったあとで監督のもとに謝罪に伺ったら「メイキングにのせる良い画が撮れた」と笑ってくれたけど、それだけは勘弁して欲しい。
「恥ずかしいやら申し訳ないやらで、次に現場に行くのが怖いです…」
「結果オーライだ。これでお前にも変な虫が寄り付かなくていいだろ」
「本庄さんじゃあるまいし、私はそんなにモテませんよ」
過去の恋愛経験だって、高校のときにお付き合いしていた1人だけ。
女性スタッフの視線を全て攫っていったり、女優さんから言い寄られていた本庄さんと違って、芸能人がうようよしている現場で私なんかに寄ってくる人がいるわけがない。
肩を竦めてみせると、本庄さんはこれみよがしに大きなため息をついた。
「お前って……」
「な、なんですか」
急になにか呆れられたような雰囲気に、ドギマギして上目遣いに真意を探る。
すると、ぽんっと頭に手のひらが乗せられた。
「…まぁ気付いてないならいいか。俺が守るし」
「え?」
「いや、いい」
ぼそっと呟いた声が拾えず聞き返したのに、笑って誤魔化されてしまった。