私だけのヒーロー
少し前まで絶対に彼に恋なんてしないと頑なに自分に言い聞かせていたくせに、あっさりこんな風に舞い上がっているんだから、私も現金なやつだ。
「映画化が情報解禁されたら、またヒーローショーが忙しくなるな」
「ですね。あっ!」
「ん?」
そうだ。言いたいこと。
母と話したのは、父のことだけじゃない。
本当はずっと心の奥底で燻っていたこと。
「本庄さん」
「ん?」
ソファの上で姿勢を正して彼を見上げる。
誰よりも、一番先に彼に伝えたかった。
「私、もう一度『ショーのおねえさん』やりたいです」
考え抜いた決意を口にすると、本庄さんは目を見開いた。
「母から聞きました。あの時、一連の記事を削除するために弁護士さんを雇って動いてくれたって」
「あぁ。俺にはあのくらいしかしてやれなかったからな」
「あのくらいだなんて」