私だけのヒーロー
先日、母から聞いた時は驚いた。
『本庄くん、弁護士雇って記事の削除依頼出すって言うから、私がやるわって言ったの。でも彼、会社が絡むと大事になったってさくらが自分を責めるかもしれないから個人で動きますって。ふふ、頼りになるわね』
私には何も言わず、ただひっそりと、好奇の視線に晒されないよう守ってくれていた。
ショーの舞台に戻るよう無理に説得することもなく、私が自ら戻りたいと言うまで待っていてくれた。
惹かれないように、傷つかないように、ずっと自分で心を守ってきたつもりだったけど、そんなこと無理だった。
いつだって、私は守られていた。
「私、強くなりたい」
「さくら」
「本当は、ずっと未練があった。子供たちの嬉しそうな顔を間近で見られる『ショーのおねえさん』の仕事は、私にとってかけがえのないものだから」
母と話して、父のことを偲んで、本庄さんのことを想って考えた。
後悔しない生き方。
誰だって、後悔しないで生きていくのは難しい。
それなら、心が望む方へ舵を切る。
それには強さが必要だけど、私にはヒーローがついているってわかったから。