好きだけど、好きなのに、好きだから
「どんな奴だったんだ?」

私は健のその問いに、彼の姿を思い返している。

「一年生だと思う」

初めて見たし、制服もまだ新しかった。

「背かなり高かったな」

190センチはありそうだった。

「すごいジャンプ力で……」

私の頭の中で、彼のダンクシュートが決まる。

あの瞬間が、目に焼き付いている。

豪快なのにしなやかで、とにかく凄いシュートだった。

「ふーん」

誠が私の顔を覗き込んで、面白くなさそうな顔をした。

「タイプだったとか?」

「ちっ、違う!」

タイプかどうか?

シュートが凄すぎて、その彼の顔をはっきりと覚えていない。
< 4 / 97 >

この作品をシェア

pagetop