好きだけど、好きなのに、好きだから
お礼が言えたのは、部活が終わってからだった。

帰ろうとする佐伯君に声を掛ける。

「佐伯君。あの、昨日はジャージ掛けてくれてありがとう」

「別に……」

あっ……

その返事が、いつも以上に素っ気なく感じる。

「風邪引いたら、誠さんが困るじゃねぇの」

少し距離を縮められたと思っていたのは、私だけだったみたいだ。
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