好きだけど、好きなのに、好きだから
次の日。

体育館からは、ドリブルするボールの音。

今日も佐伯君は、一人シュート練習をしている。

私は、入り口のドアの前に立っている。

ドアの取っ手に、手を掛けては離す。

入ったら邪魔しちゃうかな。

でも、入りたい……

そんなことを繰り返している。

もっと上手くなりたいという佐伯君の言葉に、私の心は動かされていた。

そして、ドアを開けた。

「お疲れ様」

「うっす」

佐伯君が、シュートする手を止めた。

「ボール拾いしてもいい?」

不思議そうに、私を見ている佐伯君。

でも、すぐにまた真剣な顔でシュートを打ち始める。

佐伯君の集中力は半端ではなくて、相当な数のシュートを打っていた。

「今日は先輩がボール拾ってくれたから、いつもより多め」

そう言っていた佐伯君のシュートの本数は、後から聞けばなんと500本!

私が出来ることは、ボール出しとボール拾いくらいだけど。

それでも、少しでも役に立ちたいと思った。

それから私は部活の後、佐伯君の練習に付き合うようになった。


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