好きだけど、好きなのに、好きだから
昼休み。

ボールに触りたかった俺は、体育館に向かった。

体育館のドアを開けると、優里亜先輩がボールの空気圧チェックをしていた。

「ちぃす」

先輩は、俺にボールをパスして笑った。

「ボール触りに来たのかなって思って」

そう思ったけど……

「いや……先輩、何か手伝う?」

「じゃあ」

二人で向かい合う。

先輩が空気を入れて、俺が空気圧を計る。

手際よく進んでいく作業とは反対に、先輩との会話はゆっくりと進んでいく。

「手伝いに来たんじゃないでしょ?」

「……先輩」

「ん?」

先輩が俺の方を見る。

「何で俺の練習付き合ってくれんの?」

先輩は一瞬目を見開いて、下を向いた。

「それは……」

先輩の作業の手が止まった。

作業の手と同時に、先輩の言葉も止まる。

答えづらそうにしている先輩。

「先生に目掛けるように言われたから?」

俺がそう言った時、体育館の入り口の方から声がした。
< 66 / 97 >

この作品をシェア

pagetop