好きだけど、好きなのに、好きだから
私と誠が部室前で言い合いをしていると大ちゃんと麻衣ちゃん、そして佐伯君の三人が歩いてきた。

「おっ、夫婦喧嘩っすか?」

大ちゃんが、私をおちょくる。

「こら、大ちゃん!」

佐伯君は、誠に冷たい視線を向けている。

二人がにらみ合う。

いつもは、誠を相手にしない佐伯君なのに……

佐伯君は、無言で部室に入っていった。

あっ……佐伯君どうしちゃったんだろう。

麻衣ちゃんと大ちゃんが、顔を見合ってニヤニヤしてる。

「あれはヤキモチ」

そう言った麻衣ちゃん。

「だな」

と大ちゃんが続けた。

ヤキモチ?

まさか、そんなわけない……よね。

「姉御。聞いたっすよ」

二人は、また顔を見合ってニヤニヤ。

「ん?」

「佐伯の練習に付き合ってるって」

「体育館で、二人っきりで練習かぁ」

二人っきり!

私は、二人っきりという言葉にドキッとしてしまう。

「先輩、顔赤い。やだぁ、かわいい」

そう言って麻衣ちゃんは、からかうように笑ってる。

もう!

顔が熱くなる。

自分でも、この反応が予想外だった。
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