好きだけど、好きなのに、好きだから
そして……高岡工業の選手達が帰る時間。

「最後の試合は、いい試合だったな」

小野寺が俺の前に手を差し出す。

「うっす」

握手した後、

「でも、うちが勝った」

そう言って小野寺が、俺の肩を叩いた。

そしてまた、悔しさが募る。

背中に何かが触れる感覚がして……

先輩が、俺の背中に手を添えてくれていた。

小野寺との会話を聞いていたのか、それとも悔しくてイライラしてる俺を察してなのか。

先輩は何も言わず、俺の背中を優しくトントンと叩いた。

小野寺が、優里亜先輩の前に立つ。

「優里亜さん。今度は、俺にもはちみつレモン作ってくださいね」

はぁ……

ったく、高岡工業のエースはアホなのか?

優里亜先輩と握手しようと、小野寺が手を出す。

「おい!」

すかさず反応した誠さん。

「姉御に触んな!」

と、大さん。

「悪いな小野寺。優里亜は、うちの大事なマネージャーだからな」

そう言って、キャプテンが締める。

小野寺が……

先輩と握手することはなかった。

見送った後、隣に立つ優里亜先輩が俺を見上げて微笑んだ。

そして、片付けに戻って行く先輩の後ろ姿を見つめる。

次はぜってぇ勝つ!

そんな気持ちにさせてくれる優里亜先輩は、俺にとってはちみつレモンだ。

< 96 / 97 >

この作品をシェア

pagetop