好きだけど、好きなのに、好きだから

三日間の練習試合は無事に終わり、片付けもラストスパート。

麻衣ちゃんと試合の話をしながら、水呑場で洗い物をしている。

「高岡工業って、やっぱり凄いんですね。一試合も勝てないなんて……」

会話の途中、麻衣ちゃんの言葉に手が止まる。

思い浮かんだのは、すごく悔しそうだった佐伯君のこと。

「先輩、もしかして佐伯のこと気にしてます?」

普段、感情をあまり表にしない佐伯君だからこそ気になってしまっていた。

「あっ……うん」

それと、高岡工業の監督が佐伯君に言った言葉。

藤森北に入ったことを後悔させてみせるよ。

後輩達には、うちのバスケ部に入って良かったって思ってもらいたい……

目の前の鏡越しに、麻衣ちゃんと目が合った。

「あいつなら大丈夫ですよ。バスケに関しての負けん気は、人一倍ですから」

鏡越しに笑い返した私に、

「それに、いつも優里亜先輩が練習に付き合ってるんですから」

「えっ?」

「佐伯も先輩いるから頑張れてるんじゃないんですか?」

それは、どうかな……

「私は……ただ練習に付き合ってるだけだから」

佐伯君は頑張れるとか頑張れないとか、そんなこと一々考えたりはしないんだろうな。

いつもバスケットに全力だから。

私は練習試合を振り返って、そんなことを思った。
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