八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 箱にしまわれていたテレビゲームを取り出してきて、肩を並べて対戦する。

 一人っ子だし、家になかったから人生で初のゲームだ。
 キャラクターを選んで、魔法バトルに挑戦するけど、なかなか上手くいかない。

「あれ、飛行ってどのボタンだったかな」

「L1とBの同時押し」

「ええっ、こう? あっ、こっち?」

 慣れないコントローラーに苦戦していると、椿くんの手が重なった。

「L1は左上。このあたりに配置しておくと、押しやすいよ」

 耳元でのささやきに、胸がドキッとする。

 操作の仕方を教えてくれているだけ!
 いちいち意識しない!

 ほら、また女子に戻ってしまった。
 椿くん以外は誰もいないから、気にしなくていいのだけど。わたしの心が落ち着かない。

「で、闇の魔法を解放するときは、Bを押して……」

 チラリと視線を上げると、画面を見る椿くんの顔がある。キレイな肌。まつ毛長い。

「ん?」

 ふと目が合って、あわてて前を向き直す。

 こんなの、心臓がいくつあっても足りないよ。

 ゲームを始めて一時間半。そこそこ理解してきて、初歩的な操作はこなせるようになった。
 多少だけど、椿くんにダメージを与えられるようになったし、普通に楽しい。

 次は、初心者ではなかなか出せないらしい必殺技を、成功させちゃうんだから!

「碧、もしかして戻っちゃった?」
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