八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 小ぶりの体。白いふさふさした毛。左右で色の違う青と緑の目が、こっちを見上げた。

「……ネコ?」

 ニャアと可愛らしい声をあげて、首をかしげている。

「こいつ、近所のノラ猫なんだ。前にも、一回入り込んだことがあって」

「か、かっわいい……!」

 いてもたってもいられず、その小さな体を抱き上げた。逃げるわけでもなく、つぶらな瞳を向けている。

 泥棒かと思っていたから、反動がすごい。癒される。
 スリスリしていると、黙っていた椿くんがぽつりと。

「碧、猫好きなのか」

「大好き。ネコカフェも行ってみたいと思ってたんだ」

 あいづちを打つみたいに、ニャアとわたしを見ている。かわいすぎる。

「そっか。じゃあ、ここで飼おう」

「えっ、ええ⁉︎ そんな簡単に決めていいの? 琥珀さんや藍くんに聞いてからの方が……」

 突拍子もない発言におどろいていると、椿くんは器に水を持ってきた。

「みんな動物は好きだ。反対は、されないと思う」

 チョピチョピと水を飲むネコの頭をなでながら、椿くんが寂しそうな顔をした。
 なんて切ない目をするんだろう。

 とうに夜中の十二時を超えていて、わたしたちはそれぞれの部屋の前で足を止める。
 音の原因はこの子だとわかったけど、怖いものは怖い。

 ネコを抱っこしながら、となりをチラリ見た。
 あたり前だけど、椿くんは一人でも平気なんだ。ナヨナヨしてるのは、わたしだけか。

「俺の部屋、来る?」
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