八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「わからない。みんなと仲良くなれて、僕は今、幸せだから」

 女子に人気のキャラクターキーホルダー。リュックにつけていたものを外して、机に飾っている。
 なつかしくて触ってみると、思ったより固かった。

「……椿くんは、僕のままでも仲良くしてくれる? みんなは、僕が戻っても……変わらずそばにいてくれるのかな」

 ずっと心の奥にあった想いが飛び出した。
 期待や不安が入り交じっていて、大きな風船になっている。
 いつか割れてしまうかもしれないのに、わたしはふくらますことをやめられない。

 この家を離れたときは、友達を作るんだっていきおいだけだった。

 でも、今は違う。みんなに嫌われたくない。傷つきたくない。傷つけたくない。

「オレは、アオイのすべてを受け入れるぜ。どんな秘密があっても、アオイはアオイだろ〜?」

 キャラクターのキーホルダーを手にしながら、藍くんが笑った。
 男子が飾るには、とても可愛すぎる。それを分かっていて、三葉碧を認めてくれた。

「……藍くん」



 八城家へ帰ると、リビングに琥珀さんがいた。先日からここの一員になった、猫のスカイを抱っこしながら。

「おかえ……り」

 わたしたちを見るなり、琥珀さんが動きを止めた。腕にからみつく藍くんと、さりげなくガードする椿くん。

「なーんか、面白いことになってるね」

 悪そうに笑うと、琥珀さんがジーッとわたしのまわりを見て歩いた。
 藍くんの髪や首あたりをクンクンとして、ふーんとうなずく。

 なにか分かったのかな。

 椿くんの方をチラリと見て、琥珀さんが試すように口を開いた。

「藍、アオイくんのこと好き?」
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