八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 目を丸くして、藍くんが飛び跳ねる。
 わたしの両肩を持って、向かい合っていたからだろう。

 さっきまで、手を握っていた人とは思えない反応。

「藍、なにか食べたり飲んだりしなかった? たとえば、アルコールの入ったお菓子とか」

「アルコール?」

 ハテナを浮かべる藍くんのとなりで、わたしはハッとした。
 まさか、あのチョコレートにはお酒が入っていたの?

「藍はアルコールに弱いみたいだね。極度の思考異常が出てた。大人になっても、お酒は控えた方がよさそうだね」

 ハハハと笑いながら、琥珀さんが「ねっ」と椿くんの肩に手を置く。
 そうだとしても、それだけが原因であんな状態になるものなのかな。

「……藍」

 それと、もうひとつ心配なことがある。
 チョコレートを食べてから、わたしの家へ行って帰ってきたこと。どこからどこまで覚えているんだろう。

「いくら変なもの食べたせいだとしても、俺は許さないから。碧と手をつないだり」

「や、やめろ! 何も言うな!」

「ベタベタと抱きついたり」

「あーー! オレはなにも覚えてない。なにもしてない! 碧に抱きついてたなんて、ぜったい認めないからな!」

 涙目になりながら、わたしをビシッと指差した。耳たぶから、顔全体を真っ赤にして。

 どうやら、家へ行った記憶も残っていないらしい。よかったような、さみしいような。

「はいはい、アオイくんに八つ当たりしないの。二人はちゃんと仲直りしてね」

 藍くんと椿くんをリビングから追い出して、ガチャリと鍵をした。

 琥珀さん?

「さーて、俺らも二人きりで話そうか。アオイくん」
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