八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 悪びれる様子もなく、琥珀さんはキレイな笑顔を作った。
 注文が終わるのを待っていたのか、女子高生たちが口々に質問してくる。

「どうやって、珀様に気に入ってもらえたの?」

「高校生には見えないけど、中学生? もしかして、星園(ほしぞの)だったりする?」

 あまりに気迫がすごくて、圧倒されていると。
 上を向いた琥珀さんが、くちびるの前でシーッと人差し指を立てた。

「ナイショだよね」

 話さなくていいように、気をつかってくれたみたい。
 うらやましげにしながら、女子高生たちは大人しく席へ戻った。

「驚かせて、ごめんね。バイト仲間にアピールするはずが、高等部の子たちまでいるとは」

 小さく首をふりながら、運ばれてきたグレープフルーツジュースを飲む。

 ウィッグでロングヘアになっているし、メイクもしている。
 さすがに、わたしと三葉碧が同一人物だと気づかれることはないと思うけど。だんだん不安になってきた。

「すみませーん。今日は、あのバイトさんいないんですか? えっと……ハクさん?」

 後ろの方で、お客さんが訪ねている。声の質からして、男性っぽい。
 少しずつ、琥珀さんの顔が下がっていく。

「あー、ハクですか。今日はオフなんですよー。俺が代わりにご注文うかがいますね」

 コーヒーを飲みながら、気まずそうにしている。

 このカフェは、定員さんの名札に呼び名が書かれていた。
 イケメンばかりだから、お気に入りの人に会うため通うお客さんも少なくないのだろう。

 メイド喫茶の逆バージョン……みたいな感じで。わたしの勝手な想像だけど。

「モテモテですね」

「……女たらしって思ってるでしょ」

 めずらしく、琥珀さんがマイナスなとらえ方をしている。
 いつもふり回されてばかりだから、少し意地悪な言い方をしてみた。
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