八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「まあ、そんな時もありましたけど。今は、人たらしだと思ってます」

「ふーん、それどういう意味?」

 思いのほか、冷静な笑みを浮かべながら聞き返されて、答えるのに緊張する。

「男女みんなから好かれるって、才能だと思うんです。わたしには、到底叶わないことだから。純粋にすごいなって」

 心の中をさらけ出すって、とても勇気のいること。心拍数が上がりすぎて、女子になっていた。

「そんなことないんじゃない?」

 琥珀さんが頼んだ苺タルトに、フォークを入れる。
 つやつやの苺部分を、はいとわたしへ差し出して。

「俺、本気でアオイちゃんに惚れてるし。君も十分、人たらしだよ」

 キラキラな笑顔を向けられて、赤面してしまった。

「な、なに言い出すんですか……! い、いらないですよ!」

「ほら、照れてないで。あーんして」

「で、できません!」

「頑固だなぁ」

 ハハハと笑いながら、琥珀さんがパクりと食べた。


 アンティーク・スターカフェを出て、大通りを過ぎた。となりを歩くのが気まずくて、二歩三歩うしろを行く。

 ふりむいては立ち止まってを、琥珀さんが繰り返している。

 だって、あんな告白まがいなことをされたのは初めてだったから。
 椿くんにも、ハッキリ好きだと言われたことはない。この前の『好き』は、男子の碧に対して……だから。

 また龍の鳥居が見えてきた。南雲神社。

 地元の人しか知らない小さなところだと、安斎さんと矢野さんは言っていた。

 これほど気になるのは、どうしてだろう。

「……あれ、琥珀さん?」
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