八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
一歩前を歩く椿くんを追いかけるように、小走りで廊下を進む。
たくさんの告白を断ってるって噂だから、相手の子を傷つけないためにしたのかな。
同性が好きってことにしたら、仕方ないってなると思うし。
「ぼ、僕は気にしないけど。あんなことして、よかったの? 変な噂でも広まったら……」
困るのは、椿くんの方だろう。
もしも、好きな子が出来ても、男子が好きというフィルターが一枚あると、いろいろややこしくなるんじゃないか。
もんもんと考えながら角に差し掛かった時、急に顔が近づいてきて、とっさに足が避けた。
誰も通らないような薄暗い場所。壁に追い込まれた体は、椿くんの両腕に行手を阻まれている。
「な、なに⁉︎ ど、うした……の」
静かな廊下に、ドキドキと心臓の音だけが響く。
だ、だめだよ。こんなに密着されたら、元の姿に戻っちゃう。
ーー思春期の時期にまれに現れる。
お父さんの言葉を思い出して、さっき少しSNSで調べてみたの。信憑性は分からないけど、そこには。
「……碧」
「椿くん。な、なんか……近くない?」
「顔、よく見せて」
耳元でささやかれる甘い声に、ぽわんと胸が膨らむ。
思春期病であるジェンダー症候群は、元とは逆の性別になってしまう。
その上、一定数以上の心拍数になると、一時的に体が戻ると言われているらしい。
だから、必要以上にドキドキしたらいけないのに。
たくさんの告白を断ってるって噂だから、相手の子を傷つけないためにしたのかな。
同性が好きってことにしたら、仕方ないってなると思うし。
「ぼ、僕は気にしないけど。あんなことして、よかったの? 変な噂でも広まったら……」
困るのは、椿くんの方だろう。
もしも、好きな子が出来ても、男子が好きというフィルターが一枚あると、いろいろややこしくなるんじゃないか。
もんもんと考えながら角に差し掛かった時、急に顔が近づいてきて、とっさに足が避けた。
誰も通らないような薄暗い場所。壁に追い込まれた体は、椿くんの両腕に行手を阻まれている。
「な、なに⁉︎ ど、うした……の」
静かな廊下に、ドキドキと心臓の音だけが響く。
だ、だめだよ。こんなに密着されたら、元の姿に戻っちゃう。
ーー思春期の時期にまれに現れる。
お父さんの言葉を思い出して、さっき少しSNSで調べてみたの。信憑性は分からないけど、そこには。
「……碧」
「椿くん。な、なんか……近くない?」
「顔、よく見せて」
耳元でささやかれる甘い声に、ぽわんと胸が膨らむ。
思春期病であるジェンダー症候群は、元とは逆の性別になってしまう。
その上、一定数以上の心拍数になると、一時的に体が戻ると言われているらしい。
だから、必要以上にドキドキしたらいけないのに。