八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ざわざわと人が集まりだした。
 面白そうと思ってもらえて、何人かの勧誘に成功した。

 やった!
 心の中でガッツポーズをしていたら、知らない人に肩を叩かれた。

「ねえねえ。もしかして、三葉くん?」

 この人たち、誰だろう。
 見たことのない制服を着た、男子二人組が立っていた。

 でも、わたしの名前を知っている。

「オレら、遠野さんの友達なんだけど」

 ドクンと心臓がゆれる。
 どうして、遠野さんの友達が……わたしのところへ?

「呼んで来て欲しいって頼まれてさ。一緒に来てもらっていい?」

 仕方なくついていく。
 どのみち、避けてばかりはいられないよね。

 校内へ入って、階段を上がる。どこへ行くつもりだろう。

「三葉くんって、ほんとに男? すげぇかわいい顔してるよね。女って言っても、通用しそう」

 軽く笑いながら、男子たちはさらに上へ向かう。

 試されてる? それとも、本当に知らないの? どっちだろう。

 胸の奥がざわざわする。やっぱり、引き返そうかな。

 足を止めたら、腕を掴まれた。
 あの時を思い出す。琥珀さんのウソカノをしたときに、絡まれたーー。

「……やめっ」
「さわるな」

 パシッと、手を払いのける音がした。

 体が引き寄せられて、すっぽりと腕の中へおさまる。

「気やすく碧にさわるな」

 メイド服姿の椿くんが、オオカミのような目をして立ちはだかった。美しい顔で、余計に迫力が増している。
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