八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 穂村さんと二人きり。よそよそしい空気がただよっている。

「足、怪我したの?」

「階段で、ねん挫しちゃって」

「ドジだねー。気をつけなよ」

「うん、ほんとだよね」

 会話が途切れて、静かになる。小さな息づかいすら聞こえるほど。

「あと、一ヵ月だっけ。三葉っちが、星園にいるの」

「ああ……、そう、だったね。すっかり忘れてた」

 三ヶ月の約束で、八城家へお世話になっている。あと少しで、両親の待つアメリカへ行かなければならない。

 今すぐにでも会いたいのに、気が重いのはどうしてだろう。

「……好き」

 シーンとなった保健室に、ぽつりと落とされた言葉。

「え?」

 思わず聞き返したけど、頭の中で流れるセリフに体が固まる。

「三葉っち、好き」

 苺のように染まった顔。震える声。まっすぐな瞳が、冗談ではないことを教えていた。

 初めて、女の子に告白された。

 男の子にだって、ない。椿くんや琥珀さんのは、本気なのかイマイチわからなかったから。

 どう返事をしたらいいの?
 言葉が出てこなくて、小さく口を開けては閉じてをしている。

 ドドドと緊張の波が押し寄せて、一気に心臓が爆発しそうになった。

「……え?」

 一瞬、なにが起こったか理解できなかった。
 自分の胸のあたりに、穂村さんの両手が乗っかっていたから。
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