八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
「なに……これ。どうゆうこと?」

 まっすぐ下りていたブラウスに、ふくらみが出ている。
 いつもはゆったりしたシャツだけど、メイド服はピッタリしているからボタンにすき間ができて不自然さが目立つ。

 じっと視線を下げていた穂村さんの目に、止まってしまったのだろう。

「えっと、これは……」

 とっさに言い訳が思いつかない。

「三葉っちって、ほんとは……女なの?」

 一瞬シーンとなって、わざとらしく笑い声が響く。

「そんなわけないかー! さっき、ちょっとだけ聞こえちゃったんだよね。思春期症候群ってやつ。あれ、三葉っちのことなのかなって、思っちゃってさ」

 冗談ぽく話しているけど、目は笑っていない。どちらかと言えば、おびえているように見えた。

「黙ってないで、なんか……言ってよ」

「……ごめん……なさい」

 うつむいて、ぼそりとしか出なかった。

 顔を上げられない。穂村さんにどう見られているのか、知るのが怖い。

「……あー、これドッキリでしょ。八城くんと組んで、私のこと騙そうとしてる? もう、やめてよね」

 震える声で、必死に明るさを取り戻そうとしている。

「もう、嘘はつけない。今まで、黙ってて、ごめんなさい」

 心臓のドキドキは止まらない。

 あと、どのくらいこの状況を経験したらいいのだろう。
 藍くんや安斎さん、矢野さん。クラスのみんなにも、いつかは話さなければと思っていた。

「……いきなり、わけわかんない。思春期症候群って、なに? 男じゃないって……今までのぜんぶ、嘘だったんだ。騙してたんだ」

「違う。そんなつもりは」

「笑ってたんだ! ウソカレの協力したり、私がアンタのこと好きだって、気づいてて……心の中では笑ってたんでしょ。バカなヤツって、思ってたんでしょ」
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