八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
僕のウソとわたしの決意
 わたしがアメリカへ行くまで、あと残り二週間と少し。

 藍くんや安斎さん、矢野さんたち中学校の人たちに、女子だと隠したまま。穂村さんとは、ギクシャクした状態が続いている。

 わたしの秘密を言わないでいてくれているのだから、ありがたく思わないといけない。

 学校から帰る途中、椿くんとバスの時間が重なった。一緒に乗りこんで、一番後ろの席へ座る。

 前の方で数人の生徒が話していて、騒がしい。となりの椿くんが、コソッと耳打ちする。

「碧、ちょっと付き合ってくれない?」

「どこか行くの?」

「ナイショ」

 そう微笑んで、手をつなぐ。他の人に見えないように、お互いの脚の間に隠して。

 みんなに見られたらどうしようと、手が触れているドキドキを抑えながら、じっと窓の外を見ていた。

 お客さんがほとんどいなくなり、わたしたちもバスを降りる。

 連れて行かれたのは、猫用グッズ専門店だった。

「スカイのクッションベッド買おうかと思って。アイツ、碧のベッドばっか入り込むから」

「かわいいからいいのに。それなら、土曜日の方が」

「碧と放課後デートできるの、あと何回もないだろ」

 わたしは、もうすぐいなくなる。

 当たり前だけど、椿くんや藍くん、琥珀さん……星園のみんなと会うことは、二度とないかもしれないんだ。

 ふかふかのクッションを触ったり、キャットタワー、ハンモックを見ながら胸の奥が熱くなる。

 みんなと仲良くお別れしたい。たまには、思い出してほしい。もっと欲を言うなら、アメリカへ行ったあとも遊んだりしたい。

 ぽわんと、穂村さんの顔が浮かんだ。

 でも、このままでいいのかな。
 みんなに嘘をついたまま、男の三葉碧としてお別れして後悔しないかな。
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