八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 小学二年生のとき、お父さんとお母さんに連れられて知らない街へ出かけた。

 黒いワンピースと、買ったばかりのリボンで髪をふたつ結びにして。
 小さな肩かけバッグの中には、たくさん撮って遊んだチェキ写真を入れておいた。

 歩いている人みんなが真っ黒の服を着ていて、少し怖い。

 二人は知らないおばさんと話していて、わたしは暇だった。遊びに来たと思ったのに、つまらない。

 そのとき、猫を見つけて追いかけたの。青と緑の目がキレイな白い猫。

 チラチラとこっちを見て、止まっては走って。まるで追いかけっこをしているみたいで、夢中で走った。

 長い階段をかけ上がり、気づいたら神社にたどり着いていた。

『お母さん……お父さん……』

 迷子になったと分かって、神社の中をかけ回った。
 木に足をひっかけて転んでも、痛くても、泣きながら必死に探した。

 花の浮かぶ手水舎のところで、落とし物を見つけたの。龍の絵がついた緑のお守り。

 少し先に、泣いている男の子がいる。その子も一人ぼっちで、わたしと同じ迷子だと思った。

『大丈夫?』
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