八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
声をかけたら、涙まみれの顔がみるみる晴れて、わたしの腕をつかんだ。

『それ、どこにあったの⁉︎ 君のお守り?』

 ううんと首をふって、落ちていたことを教えた。
 そしたら、また泣き出して笑うの。

『もう見つからないと思った。ありがとう。女神だ。あんたは女神さまだ』

 泣きたいのはこっちなのに、変な子。そう思いながら、少しだけ不安が消えていく。

 この神社にずっと一人きりだったら、怖くて動けなくなっていたかもしれない。

『名前、なんて言うの?』

 涙跡のついた目は赤いけど、かっこいい子。
 同じクラスだったら、きっと人気者なんだろうな。

『あおいだよ。みつばあおい。あ、そうだ! これあげるね』

 かばんの中からチェキ写真を取り出して、その子の手に乗せた。

『……あおい』

『もしまた会えたら、友達になろうよ』

『うん、約束』

 指切りをして、その子は迎えの来た鳥居の方へ走って行った。

 見えなくなるまで手をふって、本殿へ向かって歩いていたら、探しに来たお母さんたちに会うことができた。
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