八城兄弟は僕(=わたし)を愛でたい!
 ーー思い出した。
 六年前。この南雲神社で、わたしは椿くんと出会っていた。

 この街を訪れていた理由は、くわしくはわからないけど。あのチェキ写真は、わたしが渡したものだった。

「さっき、お礼してきたんだ。ここの龍神に。碧と出会わせてくれて、ありがとうって」

 優しい横顔を見て、胸がキュッと苦しくなる。

 いつの間にか、女子の姿に戻っていた。

「……椿くん。ごめんなさい。約束したのに……覚えてなくて、ごめんね」

「思い出してくれたの?」

 ぽろぽろと流れる涙を、椿くんの指が消していく。
 小さくうなずいたら、コツンとおでこが重なった。

「なら、今日来てよかった」

 トクン、トクン。二人の心臓の音が聞こえる。

「ずっと、会いたかった。好きなんだ、碧のこと」

「うれしい……わたしも、椿くんが好きです」

 そのままギュッと抱きしめられて、動けなくなる。

 ドキドキは止まらない。
 なにも考えられない。

 心が通じ合う瞬間って、こんな感じなんだ。
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